
Web制作会社を探しています。実績とデザインを見て選べばいいのでしょうか。

それだけだと足りません。サイトは公開してからが本番で、公開後に成果が出ない原因の多くは制作前の決め方にあります。順番としては、何で成果を測るかを先に決めてから会社を見てください。
Web制作会社の選び方を調べると、実績・デザイン・対応範囲・体制といったチェックリストが出てきます。どれも間違いではありませんが、リストを埋めても公開後に問い合わせが増えるかどうかは別の話です。
この記事は制作会社ではなく、公開後の集客を担当する立場から書いています。作ったあとに伸びなかったサイトに共通する原因と、それを発注前に防ぐ選び方を整理しました。
- 企業のホームページ開設率は93.2%。市場はすでに新規制作ではなくリニューアルが中心です
- 成果が出ない原因は目的・設計・集客・運用の4つに分かれます。デザインが原因であることはほとんどありません
- 見積書で見るべきは総額ではなく修正回数・原稿と写真の担当・公開後の更新権限の3点です
- 制作と集客を同じ会社に頼むか分けるかは、社内に判断できる人がいるかで決まります
- 発注前に公開1年後にどうなっていれば成功かを1文で書けるかを確認してください

株式会社オークスでは実際のWebコンサルタントである、柏倉元太(@genta_oaks)が記事を監修。
月間数十万PVのメディアを複数運営しながら、現在はSEOからSNS、YouTubeまで様々な分野のマーケティング企業を運営。
9割の企業はすでにサイトを持っている

開設率は93.2%まで来ている
選び方の前に、市場の前提を確認しておきます。
総務省の通信利用動向調査によると、自社のホームページを開設している企業の割合は93.2%でした。前年から0.2ポイントの上昇です。調査は令和6年8月末時点、有効回答は2,330社となっています。
| 産業分類 | 開設率 |
|---|---|
| 情報通信業 | 98.6% |
| 金融・保険業 | 97.0% |
| 不動産業 | 96.7% |
| 建設業 | 95.4% |
| 卸売・小売業 | 95.3% |
| 全体 | 93.2% |
従業者規模で見ると、300〜499人の企業が98.0%で最も高くなっています。
この数字が意味するのは単純です。制作会社への依頼のほとんどは、ゼロから作る案件ではなくリニューアルだということです。すでにあるサイトが成果を出していないから作り直す、という構図になります。
ここで選び方の基準が変わってくるはずです。「きれいなサイトを作れる会社」ではなく、今のサイトが成果を出せていない理由を説明できる会社を選ぶ必要があります。この2つは別の能力です。
出典は総務省「令和6年 通信利用動向調査報告書(企業編)」です。
半数の企業はアクセシビリティを知らない
同じ調査に、制作会社選びで効いてくる数字がもう1つあります。Webアクセシビリティの規格であるJIS X 8341-3:2016への準拠状況です。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 規格もアクセシビリティも知らなかった | 51.5% |
| 金融・保険業で何らかの取り組みあり | 約6割 |
半数を超える企業が、規格の存在もアクセシビリティという概念も知らないままサイトを運営しています。産業別では金融・保険業だけが突出しており、規格を満たしている9.7%、取り組み中27.4%、規格は目指さないが何らかの対応22.8%を合わせて約6割に達しています。
これが選び方に関わるのは、発注側が知らない領域は提案されない限り抜け落ちるからです。文字サイズ、色のコントラスト、キーボード操作、画像の代替テキスト。いずれも作る段階で入れれば追加費用はほとんどかかりませんが、公開後に直すとページ単位の改修になります。
面談で「アクセシビリティはどこまで見ていますか」と聞いてみてください。答えられる会社は多くありません。答えられること自体が、その会社の設計力を測る材料になります。
成果が出ないサイトの4つの原因

4層のどこで詰まっているかを見る
公開後に伸びなかったサイトを見ていくと、原因は次の4層のどこかにあります。層を取り違えると、直す場所を間違えます。
最も多い原因です。問い合わせを増やしたいのか、採用の応募を増やしたいのか、信用を担保したいのかで、必要なページも文章もまったく変わります。目的が曖昧なまま発注すると、制作会社は無難で網羅的なサイトを作ります。誰にも刺さらない代わりに、誰からも文句が出ない構成です。
目的は決まっていても、導線がそれを支えていないケースです。問い合わせが目的なのに、フォームへの導線がグローバルナビの奥にしかない。サービスの説明が抽象的で、読んでも自社が対象なのか判断できない。デザインの美しさとは無関係に起きます。
サイトの中身は問題ないのに、そもそも訪問者がいない状態です。リニューアルでURLが変わり、以前あった検索流入が消えたケースもここに入ります。制作の契約範囲に集客が含まれていないことが多く、公開後にはじめて発覚します。
公開した時点で情報が止まり、実績も事例も増えないまま数年が経つパターンです。更新に制作会社への依頼が必要で、都度費用がかかる契約だと、この状態に陥りやすくなります。更新できない構造が原因なので、担当者のやる気の問題ではありません。
実績ギャラリーでは選別できない
注目してほしいのは、4つのどれもデザインの巧拙ではない点です。実績ギャラリーを見比べて選ぶという一般的な方法は、この4層のどれにも効きません。
逆に言えば、候補の会社がこの4層のどこまでを自社の仕事だと考えているかを聞けば、選別ができます。1層目と2層目まで踏み込む会社と、3層目を渡してくれる会社と、2層目だけを請け負う会社では、公開後の結果が違ってくるでしょう。
制作会社のタイプと向き不向き

守備範囲で5タイプに分かれる
制作会社は同じ看板を掲げていても、得意分野がはっきり分かれる業界です。4層のどこを守備範囲にしているかで整理したのが次の表です。
| タイプ | 強い層 | 向いているケース |
|---|---|---|
| デザイン特化 | 2層目 | ブランドの見え方を変えたい |
| マーケティング特化 | 1〜3層目 | 問い合わせ数を増やしたい |
| システム開発 | 2層目と機能 | 会員機能や予約機能が要る |
| 低価格パッケージ | 2層目を型で提供 | まず形にしたい・予算が限られる |
| フリーランス | 案件ごとに差が大きい | 小規模で意思疎通を早くしたい |
料金を公開する会社と非公開の会社
低価格パッケージの水準も見ておきます。あきばれホームページは初期54,780円・月額6,490円で14ページという料金を自社サイトに掲載しています。サーバー代とSSL、サポートを含んだ形です。
一方でベイジのように料金を公開せず問い合わせを求める会社もあります。個別見積もりが前提の領域なので、非公開そのものは珍しくありません。
相場としては、ランディングページで15万〜80万円、コーポレートサイトで50万〜300万円、採用サイトで30万〜150万円、ECサイトで100万〜500万円以上という数字が比較メディアで示されています。ただしこれらは各社の公開料金を積み上げたものではないため、目安として扱ってください。
見積書はここだけ見る

総額より先に見る3点
見積書を並べて総額で比べると、判断を誤ります。同じ100万円でも含まれる範囲がまったく違うためです。
総額より先に、次の3点を確認してください。
- 修正回数の上限:無制限か、2回までか。超過分の単価はいくらか
- 原稿と写真の担当:文章は誰が書くのか。撮影は含むのか
- 公開後の更新権限:自社で直せるのか、都度依頼が必要か
とくに原稿は見積書から漏れやすい項目です。「テキストはご支給ください」と小さく書かれていると、全ページ分の文章を自社で書くことになります。ここを見落とすと、制作が始まってから社内工数が跳ね上がるので注意してください。
3点目の更新権限は、先ほどの4層目に直結します。自社で直せない構造にすると、公開した日が情報の鮮度のピークになります。
あわせて、進行管理費という項目にも目を通してください。Xserverの解説は総額の10%程度を目安に挙げています。金額そのものより、その費用で誰が何をするのかを確認するほうが実務では重要になります。
公開後に毎月かかるもの
ランニングコストも忘れずに聞いておきましょう。サーバー・ドメイン・SSLの維持費、保守契約の月額、CMSの更新対応が、公開後に毎月かかります。
制作と集客は同じ会社に頼むべきか

まとめる場合と分ける場合の比較
ここは意見が分かれる論点です。オークスは制作も集客も扱う立場なので、どちらが正しいとは書きません。判断材料だけ並べます。
| 観点 | まとめて依頼 | 分けて依頼 |
|---|---|---|
| 責任の所在 | 成果まで一社が負う | 互いに責任を押し付けやすい |
| 公開後の対応 | そのまま改善へ移れる | 引き継ぎの手間が発生する |
| 費用 | 窓口が1つで管理が楽 | 相見積もりで下げやすい |
| 品質 | 両方が得意とは限らない | 各領域の専門性を選べる |
| 必要な社内体制 | 任せきりでも回る | 判断できる人が要る |
決め手は社内に裁定できる人がいるか
決め手は最下段です。社内に両者の言い分を判定できる人がいるなら分けたほうが安く済み、いないならまとめたほうが破綻しません。分けた場合、成果が出なかったときに制作側は集客のせいだと言い、集客側はサイトの作りのせいだと言います。この裁定を誰がするのかという問題です。
まとめて依頼する場合の注意点も1つあります。制作が得意な会社が集客も得意とは限りません。契約前に、集客側の実績を制作実績とは別に見せてもらってください。
発注前に聞く5つの質問

全社に同じ質問をする
相見積もりの段階で同じ質問を各社にぶつけると、実力の差がはっきり出ます。
- 今の弊社サイトが成果を出せていない理由を、どう見ていますか
- 公開後の流入は、どこから来る想定ですか
- URLが変わるページは何本で、リダイレクトは誰が設定しますか
- 公開後、私たちが自分で直せる範囲はどこまでですか
- 契約が終わったあと、サイトのデータは誰のものになりますか
1つ目は既存サイトを見ずに答えられません。その場で仮説を出せる会社と、持ち帰りますと言う会社で差が出ます。
リダイレクトの答え方で守備範囲が分かる
3つ目のリダイレクトは、リニューアルで最も事故が起きる箇所です。旧URLから新URLへの転送を設定しないと、それまで検索から来ていた人が全員404に着地します。この質問に具体的な手順で答えられない会社は、3層目を守備範囲にしていません。
5つ目も確認しておいてください。ドメイン・サーバーの契約名義、CMSの管理者権限、素材データの所有が制作会社側のままだと、次の会社へ移りにくくなります。
オークスは制作会社ではなく、SEOと広告で集客を担当してきた立場から、公開後に伸びなかったサイトを見てきました。相見積もりの内容が妥当かを、発注側の視点で確認したい場合はご相談ください。
リニューアル後に検索流入が落ちた場合の見方はこちらにまとめました。

制作の一部を外に出すかどうかの判断基準は別記事で整理しています。

リニューアルで流入を落とさないために
依頼のほとんどがリニューアルである以上、公開の瞬間に既存の検索流入を失わないことが最低条件になります。発注側が把握しておくべき手順は3つです。
旧URLの一覧を先に作る
現在のサイトにあるページのURLをすべて書き出します。ここが漏れると、リダイレクトの設定漏れも同じだけ発生します。作業は制作会社に頼めますが、一覧の受け取りは発注側で必ず行ってください。公開後に流入が落ちたとき、この一覧が原因究明の起点になります。
リダイレクトの担当と方式を決める
旧URLから新URLへ転送する設定を、誰がいつやるのかを契約時に決めます。転送には恒久的な移転を示す方式と一時的な方式があり、リニューアルでは恒久的な方式を使います。ここを取り違えると、検索エンジンが新URLへ評価を渡してくれません。
公開後2週間は流入を毎日見る
公開直後は変動します。1日単位で検索流入を見て、前月同曜日と比べて大きく落ちているページがないかを確認してください。
落ちている場合、原因はリダイレクト漏れか、ページ自体を削除したかのどちらかです。ページ数を減らすリニューアルは、減らした分の流入が確実になくなります。削除するページを決める前に、そのページに検索からの訪問があるかを見ておきましょう。
Web制作会社の選び方によくある質問
- 実績とデザインで選んではいけませんか?
-
見る価値はありますが、それだけでは足りません。実績ギャラリーからは、そのサイトが公開後にどうなったかが分かりません。同じ業種の実績があるなら、公開後に問い合わせがどう変化したかまで聞いてください。答えられるかどうかで、その会社の守備範囲が見えます。
- 安い会社に頼むと失敗しますか?
-
価格そのものが失敗の原因になるわけではありません。低価格パッケージには初期54,780円・月額6,490円といった水準があり、まず形にしたい段階なら合理的な選択です。問題になるのは、目的が定まっていないまま高額な個別制作を発注した場合で、金額に関係なく成果は出ません。
- 相見積もりは何社取るべきですか?
-
3社前後が扱いやすい範囲です。それ以上になると比較の工数が増え、判断が鈍ります。大切なのは社数ではなく、全社に同じ質問をして同じ条件で答えを並べることです。条件がずれた見積もりを並べても比較になりません。
- リニューアルで検索順位が落ちることはありますか?
-
あります。URLが変わったのにリダイレクトを設定していない、ページ数を大幅に減らした、テキスト量が画像に置き換わったといった場合に起きます。発注前にリダイレクトの担当と手順を確認し、公開直後は検索からの流入を必ず観測してください。
- 制作会社が料金を公開していないのは不安です
-
個別見積もりが前提の領域なので、非公開自体は珍しくありません。実際に大手の制作会社でも問い合わせを求める形が見られます。判断すべきは公開の有無ではなく、見積書が出てきたときに項目ごとの内訳と根拠を説明できるかどうかです。
- アクセシビリティは対応すべきですか?
-
総務省の調査では、規格もアクセシビリティも知らなかったと答えた企業が51.5%でした。つまり対応していない企業のほうが多い状況です。ただし文字サイズや色のコントラストは制作段階で入れれば追加費用がほとんどかかりません。公開後の改修は割高になるため、新規制作やリニューアルのタイミングで相談しておくのが合理的です。
- ページ数は減らしても大丈夫ですか?
-
減らしたページに検索からの訪問があるかを先に確認してください。訪問があるページを削除すると、その分の流入は戻りません。内容が古いだけなら、削除ではなく新URLへ転送して統合する方法もあります。判断材料が社内にない場合は、制作会社にアクセス解析の確認を依頼してください。
Web制作会社の選び方まとめ
選び方の軸は、作る前ではなく作ったあとに置くのが実務的です。
- 企業のホームページ開設率は93.2%。依頼のほとんどはリニューアルです
- 成果が出ない原因は目的・設計・集客・運用の4層。どれもデザインの巧拙ではありません
- 候補の会社が4層のどこまでを自社の仕事と考えているかを聞けば、選別できます
- 見積書は総額より、修正回数・原稿と写真の担当・公開後の更新権限の3点を先に見ます
- 制作と集客を分けるかは、社内に裁定できる人がいるかで決めてください
- リダイレクトの担当と手順を答えられない会社は、公開後の流入を守備範囲にしていません
掲載した料金は2026年8月時点で各社が公開していたものです。相場として示した金額は比較メディアの記載であり、各社の公開料金を積み上げた数値ではありません。







