
代理店の手数料を減らしたいのですが、広告運用は自社へ移せますか?

移せます。担当者の時間と判断スキルを確保し、外注時と同じ成果を維持できるかまで比べましょう。
広告運用の内製化は、配信・計測・改善を担う時間とスキルを確保できれば進められます。Google広告などの操作だけでなく、事業目標に沿って成果を判断する体制が必要です。完全内製に限らず、専門家の伴走を受ける形も選べます。
月次の請求書を見て「この手数料を社内に回せないか」と考えたら、担当者の工数と成果件数を並べてみましょう。手数料が減っても、獲得件数が落ちれば費用対効果は悪化します。移行前に決めるのは、担当範囲と費用、引き継ぎの合格条件です。
- 内製・外注・伴走支援は、社内に残す判断と作業の範囲で選ぶ
- 主担当の時間に加え、代替担当と予算の承認者を確保する
- 手数料だけでなく、人件費と移行費用を含めた獲得単価で比べる
- 権限・請求・計測を引き継ぎ、一部の運用から段階的に移す

株式会社オークスでは実際のWebコンサルタントである、柏倉元太(@genta_oaks)が記事を監修。
月間数十万PVのメディアを複数運営しながら、現在はSEOからSNS、YouTubeまで様々な分野のマーケティング企業を運営。
広告運用の内製化とは?外注・伴走支援との違い

広告運用の内製化とは、広告の企画、配信設定、分析、改善を自社の担当者が行うことです。インハウス化とも呼びます。すべてを一度に引き取る必要はなく、媒体や業務ごとに自社と外部の担当を分ける方法もあります。
体制を選ぶときは「管理画面を誰が操作するか」に加え、誰が改善を判断し、誰が承認するかを決めましょう。運用を外注しても、利益目標や許容する予算まで外部へ任せるわけではありません。
自社で持つ業務範囲を先に決める
| 業務 | 完全内製 | 外注 | 伴走支援の分担例 |
|---|---|---|---|
| 事業目標・広告予算の承認 | 自社 | 自社 | 自社 |
| 媒体選定・施策の設計 | 自社 | 外部が提案、自社が承認 | 自社と専門家で設計 |
| 広告の入稿・日常の配信確認 | 自社 | 外部 | 自社 |
| コンバージョン計測の設定 | 自社 | 契約範囲に応じて外部 | 専門家の設計を自社が検収 |
| 広告素材・LPの制作 | 自社または制作を外注 | 運用契約とは別に分担 | 自社中心、難しい制作は外注 |
| 結果の分析・改善の判断 | 自社 | 外部が提案、自社が判断 | 自社の判断を専門家がレビュー |
| 担当者の育成・引き継ぎ | 自社 | 自社の確認担当を育成 | 運用と並行して自社担当を育成 |
LPは広告をクリックした人が最初に見るページです。広告文を変えても、LPの説明やフォームに問題が残れば獲得につながりません。広告とLPの改善担当を結び付けることも、内製化の業務範囲に含めて考えます。
伴走支援には決まった分担があるわけではありません。例えば日々の入稿は自社、計測設計と月次の分析は専門家へ依頼する形です。契約時に、作業する人と助言する人の違いを明記すると認識のずれを防げます。
内製化のメリットとデメリットを対で見る
| 得られるメリット | 増える負担・リスク | 判断するポイント |
|---|---|---|
| 運用手数料を減らせる | 人件費・研修・ツール費が増える | 同じ成果を保った総コスト |
| 商品や在庫の情報を反映しやすい | 担当者の不在時に対応が止まる | 承認者と代替担当の有無 |
| 改善の理由と結果が社内に残る | 記録しないと個人の経験で終わる | 変更履歴と判断メモの共有 |
| 営業や商品担当と直接話せる | 媒体の仕様変更も自社で追う | 学習時間と外部へ相談する経路 |
内製化の価値は、自社の顧客理解を改善へ反映できることにもあります。ただし社内承認が遅いままでは、運用担当を変えても施策は速くなりません。担当範囲と承認の流れをセットで見直すと、移行の目的が明確になります。
広告運用を内製化できる会社の判断基準

内製化を進めやすいのは、担当者が決まっていて、日常の確認と改善に時間を使える会社です。月間広告費だけで適性は決まりません。媒体数や広告素材の更新頻度、社内の経験によって必要な工数が違うためです。
担当者・代替要員・承認者を置けるか
まず、主担当・代替担当・予算承認者を決めます。役割ごとに専任社員を採用する意味ではなく、兼任であっても担当者名と判断範囲を明確にするための区分です。主担当が休んだ日に、誰が異常を確認し、停止を判断するかまで定めましょう。
例えば主担当が広告文を修正し、代替担当が掲載先と予算設定を照合し、責任者が増額を承認する流れです。判断する人が不明なまま兼任者へ仕事だけを渡すと、対応の先送りが起こります。
Google広告では、ユーザーごとにアクセス権を設定する仕組みです。管理者が1人だけだと、その人が対応できない際にタグの管理が途切れるおそれがあります。Google広告のアクセス権管理を踏まえ、各担当に必要な権限を割り当てる設計です。個人のログイン情報は共有しません。
配信・計測・改善の技能と工数を確保できるか
| 領域 | 担当者が実行できる状態 | 不足する場合の対応 |
|---|---|---|
| 日常の配信確認 | 予算消化・配信停止・審査状況を見て異常に気付く | 確認表を用意し、当面は外部と照合 |
| 媒体の運用判断 | Google広告の検索語句やMeta広告の素材別結果から改善を提案 | 媒体を絞り、助言を受けながら担当 |
| 計測 | 購入・問い合わせイベントの発火と重複を確認 | 設定と検証を専門家へ依頼 |
| 広告素材・LP | 訴求を整理し、制作担当へ依頼して更新 | 制作だけ外注し、企画と承認は自社 |
| 事業成果の分析 | 問い合わせの質や受注まで追い、広告結果と照合 | 営業部門と判定ルールを作成 |
必要工数は、作業時間×実施回数で積み上げます。日々の確認、広告素材の制作、集計、打ち合わせ、学習を分けて記録しましょう。「空いた時間に見る」では、繁忙期にも確保できる時間かを判断できません。
時間と代替担当を確保できるなら、一部の運用から引き取る候補です。操作はできても分析に不安があるなら伴走を検討します。担当時間を確保できない場合は外注を続け、まず社内で成果を読む体制から整える方が進めやすいでしょう。
広告運用の内製化費用を総コストとCPAで計算する

内製化の費用は、削減する手数料と新たに担う業務コストを同じ条件で比べます。CPAはコンバージョン1件あたりの費用です。ここでは比較のため、広告費に手数料や社内工数を加えた「総コスト込みCPA」を使います。広告管理画面に表示されるCPAとは、計算範囲が違う指標です。
社内工数と移行費用を手数料と比較する
社内コストには給与の時間換算に加え、会社が負担する関連費用、学習、レビュー、制作を含めます。既存社員が兼任する場合も、広告へ使った時間だけ他の仕事へ使える時間が減るため、既存社員の工数をゼロ円にしないのが比較の出発点です。
以下は媒体費を月100万円に固定した仮定の計算例です。外注手数料を20万円、社内工数を月20時間、時間単価を4,000円、ツールなどの費用を2万円と置きます。移行後も残る共通の作業費は、外注時と内製後の両方へ同じ条件で加えましょう。
| 費用項目 | 外注時の仮定 | 内製後の仮定 |
|---|---|---|
| 媒体へ支払う広告費 | 100万円 | 100万円 |
| 運用手数料 | 20万円 | 0円 |
| 移す業務の社内工数 | 外注手数料に含む | 20時間×4,000円=8万円 |
| ツールなどの追加費用 | 外注手数料に含む | 2万円 |
| 月間総コスト | 120万円 | 110万円 |
| 差額 | 比較の基準 | 月10万円の減少 |
同じ成果が出るなら、この例の月間総コストは10万円下がります。一方、時間単価4,000円、追加費用2万円の条件では、社内工数の費用上の分岐点は(20万円−2万円)÷4,000円=月45時間です。45時間を超えると、同じ成果でも外注時より総コストが増えます。
初期の研修費、引き継ぎ費、外注との重複期間は別に加えましょう。例えば移行費を30万円と仮定し、月10万円の差額を維持できれば、費用の回収は30万円÷10万円=3か月です。これは費用計算の例であり、3か月で担当者が自走するという意味ではありません。
実際の見積もりには、最低手数料、制作費、固定の助言料なども入ります。料率だけで比べず、移す業務が手数料のどこに含まれているかを合わせることが大切です。
運用手数料の計算範囲や実効負担率は、以下の記事で整理しています。

獲得数が減っても費用メリットは残るか
手数料が下がっても、同じ予算で獲得できる件数が減れば採算は変わります。前の例で外注時に100件のコンバージョンを得ていたと仮定すると、総コスト込みCPAは120万円÷100件=12,000円です。
| 体制と獲得件数 | 月間総コスト | 総コスト込みCPA |
|---|---|---|
| 外注時・100件 | 120万円 | 12,000円 |
| 内製後・100件 | 110万円 | 11,000円 |
| 内製後・92件 | 110万円 | 約11,957円 |
| 内製後・90件 | 110万円 | 約12,222円 |
外注時の12,000円以内を維持する最低件数は、110万円÷12,000円=約91.67件。獲得件数を整数で扱うなら92件以上です。90件へ落ちると、支出は減っていても総コスト込みCPAは外注時を上回ります。表の端数は円単位で四捨五入しています。
この境界は移行の判断材料ですが、事業の損益分岐点とは別です。商談化率や客単価が変われば、同じCPAでも利益は変動します。同じ成果定義・比較期間・計測方法で比べ、最終的には有効商談や受注、粗利につながったかまで評価しましょう。
広告運用の内製化を進める4段階の移行手順

移行は、現在の成果を把握してから、管理基盤、一部の運用、自走の順で進めます。最初にすべての代理店契約を終了するのではなく、引き継ぎを検収できた業務から移す進め方です。各段階で達成条件を決めると、準備の不足を見つけられます。
段階ごとの担当範囲と達成条件を決める
運用中の媒体と予算、外注費、広告素材、計測方法、直近の成果を一覧にします。主担当は作業別の工数を記録し、責任者は何を内製へ移すかを決定。総コストと成果件数をそろえた比較の基準表が、この段階の成果物です。
自社の担当者が広告アカウント、GA4、タグ管理、制作物へアクセスできる状態を整えます。ログインできることと、請求や計測を管理できることは別です。担当者が自分の権限で確認・変更でき、必要なイベントが記録されることを検収します。
まず対象の媒体やキャンペーンを絞り、担当者が入稿、日常の配信確認、分析を行います。必要なら外部が設定や判断をレビュー。同じ項目を双方が同時に変更しないよう、編集担当と承認範囲を固定し、成果と工数を記録します。
総コスト込みCPAと事業成果、実際の工数を基準表と比べます。代替担当が手順書を使って配信状態を確認し、異常時の対応を説明できるかも評価。条件を満たした業務から外部の関与を減らし、難しい媒体や計測は支援を残します。
移行に必要な期間は、担当者の経験や作業範囲、成果が確定するまでの時間で変わります。「何か月経ったか」で区切らず、自分で運用し、理由を説明し、別の人へ引き継げるかを卒業条件にしましょう。
アカウント・計測・制作物の引き継ぎを検収する
Google広告のMCCは、複数の広告アカウントを管理するクライアントセンターです。MCCとのリンク解除には管理者権限が必要で、解除前に影響のプレビューが表示されます。Google広告のリンク解除手順に沿い、広告アカウントへの自社アクセスと請求・計測の準備を済ませてから切り替えます。
| 対象 | 引き継ぐ情報 | 自社での検収条件 |
|---|---|---|
| 広告アカウント | アカウントID、ユーザー権限、MCCとの関係 | 主担当と代替担当が必要な操作を行える |
| 請求 | 支払方法、請求先、切り替え日、残る請求 | 切り替え後の支払担当と請求先が決まっている |
| コンバージョン計測 | イベント名、発火条件、タグ、連携元、集計方法 | テスト時に想定したイベントが記録される |
| 広告設定 | 入札、予算、配信対象、除外条件、過去の変更理由 | 現在の設定と、その理由を説明できる |
| 広告素材・LP | 編集可能なデータ、掲載先、利用できる範囲 | 必要な更新を担当者が実行・依頼できる |
| 運用手順 | 確認項目、異常時の連絡先、停止・増額の権限 | 代替担当が手順書を使って対応できる |
計測の引き継ぎは、管理画面の設定を見ただけでは完了しません。自社のテスト環境で購入・問い合わせを動かし、想定したイベントが発生するかを確かめます。GA4では、デバッグモードを有効にしてDebugViewでイベントを確認できます。同意状態など、イベントが表示されない条件も切り分ける対象です。
また、パスワードを並べた一覧に頼らず、権限付与の手順を共有しましょう。設定一覧、変更理由、制作物の所在を整理する方が、退職や担当変更にも対応しやすくなります。
委託先の変更も検討している場合は、以下の記事で契約終了と引き継ぎの順序を整理しましょう。

広告運用の内製化で失敗を防ぐ運用ルール
自社で設定を変更できるようになったら、変更の記録と成果の評価方法を固定します。主担当の経験だけで運用を進めると、後任が変更理由を追えません。内製化の後にも使える判断基準を残すことが大切です。
一度に変える設定を絞る
移行の直後に、予算、配信対象、広告文、LPをまとめて変えると、成果が動いた原因を特定しづらくなります。まずは既存の設定を把握し、変更の仮説・実施日・評価日を記録しましょう。
例えば「問い合わせの質を上げるために、広告文へ対象企業の条件を加える」と仮説を置きます。評価はクリック数だけで終えず、有効な問い合わせの件数まで追う設計です。変更前の内容も残しておくと、戻す判断と後任への説明に使えます。
管理画面のCVと事業成果を分ける
CVはコンバージョンの略で、購入や問い合わせなど、広告で獲得したい行動です。フォーム送信をCVにしている場合、資料請求の重複や営業対象外の問い合わせが含まれていないか、営業側の記録と突き合わせます。
Google広告のコンバージョンは、複数の集計項目を持つ指標です。行動の日時と広告に接触した日時の違い、データの反映遅延も考慮します。コンバージョンデータの定義を踏まえ、比較する期間・列・対象行動をそろえます。GA4と広告管理画面の件数が違うだけで、計測ミスと決め付けないことも必要です。
広告のCV・有効商談・受注を分けて管理すると、広告設定の改善と事業の改善を結び付けられます。集計の範囲を変えた日は記録し、変更前と同じ条件の数字で比べるようにしましょう。
外部へ戻す条件と学習記録を残す
内製化を始める前に、成果が基準を下回ったときの対応を決めます。計測の不具合、媒体の配信状態、担当者の工数不足を先に切り分け、その後に運用体制を見直す順序です。日ごとの変動だけで外注へ戻す判断をしないよう、評価期間も置きましょう。
- 総コスト込みCPAと有効商談数の目標・評価期間を決める
- 計測停止や予算消化の異常に気付いたときの連絡先を共有する
- 担当時間を確保できなくなった業務は、外部への再委託を検討する
- 変更の仮説、設定、結果、次の判断を共有の記録に残す
外部支援を減らすこと自体を目標にすると、必要な助言まで切ってしまいます。運用できる範囲は自社、難しい判断は外部と分け、必要な支援だけ残す形でも内製化は進められます。記録を残しながら、自社が判断できる業務を増やしましょう。
広告運用の内製化に関するよくある質問
日々の運用を引き取る際に迷いやすい、資格、AIの使い方、兼任体制について回答します。いずれも管理画面の操作だけで判断せず、責任を持って成果を評価できる範囲から始めるのが基本です。
- Google広告の認定資格があれば、内製化へ移れますか?
-
資格の学習は媒体の仕組みを整理する助けになります。ただし、資格取得だけでは自社の予算管理、計測、改善、引き継ぎの準備は完了しません。実際のアカウントで担当する業務を決め、設定を検証し、結果から次の改善を説明できる状態まで確認して移行します。
- AIや自動入札に任せれば、運用担当者は不要ですか?
-
不要にはなりません。AIは広告文の案出しや集計の補助に使えますが、成果として何を計測するか、どの予算まで使うか、表現が商品と合っているかは自社の判断です。自動化を使う場合も、結果を確認し、異常時に停止や見直しを行う担当者を置きます。
- 運用を兼任する社員が1人でも始められますか?
-
主担当が1人でも、担当する媒体や業務を絞れば始められます。ただし、不在時の配信確認と停止判断を別の人が担う体制は用意しましょう。代替担当も確保できない場合は、日常運用を外注し、自社では数値の確認と改善の判断から引き取る方法が現実的です。
広告運用の内製化は小さく移し、総コストで判断する
広告運用の内製化は、担当する作業と判断、費用、引き継ぎの条件をそろえて進める取り組みです。自社で運用できるかを見極めたうえで、成果を守りながら引き取る範囲を広げましょう。
- 最初に現在の作業と工数を一覧にし、主担当・代替担当・承認者を決める
- 自社の費用と成果件数を計算例へ当てはめ、必要な獲得件数を求める
- 権限・請求・計測を検収できた一部の運用から引き取る
- 工数や成果が基準を満たさない業務は、外注・伴走を残して補う
株式会社オークスは、広告戦略とKPI設計、広告運用、効果検証、改善提案を支援しています。内製か外注かの判断に迷う場合は、現在の広告媒体、月間予算、社内の担当体制、課題を整理してご相談ください。
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